The Migratory Bird

自分が渡り鳥だと勘違いしている人間の書き溜め

フランスに住み始めた

8月の末からフランスに住み始めた。研究者をやってる彼氏(フランス人)がかなりお世話になってる上司が「日本育ちでイージーモードの生活しか知らない娘に世界を見せたいから」とのことで引っ越しを決めたから。彼に一緒に来ないかと誘われて、彼に師事するメリットのためについて行くことにしたらしい。私はとりあえずワーホリビザでこちらに来た。手続きはそれなりに大変だったが、必要な書類を集める作業はクエストみたいで結構楽しかった。

 

新天地は南フランスにあるトゥールーズという街で、今のところかなり気に入っている。バラ色の街と呼ばれる街で、オレンジ味やピンク味のかかったレンガが印象的。南に位置するため秋や冬でも比較的あたたか。夏はヤバいらしいので二人で怯えているが。私たちの愛の巣はガロン川のそばにあり、街の中心地に出て行く時は必ず川辺を通ることになるため、とても気持ちがいい。河川というのはいい。海のような底知れぬ怖さがないし、波がないので穏やかで、かつ視界が開けていて情報が少ない。フランスに来て寂しかったりもするが、外に出るたびに「あー、やっぱり来て良かったな」と思わせてくれるので感謝している。

 

フランス生活は、まあ、大したことない。彼のご両親や友人たちとは上手くやっているし、語学学校もなんてことない。そばに友達ができなくて寂しいが、まあ今のところは日本にいる家族や友人と話すことで孤独を紛らわしてなんとなっている。双極性障害持ちなので相変わらずうつな期間もあるが、これは昔からなのでここでうつになっているからと言って動揺はしない。境界性人格障害もあるので、発狂して叫び散らかしドアを強く蹴って足の親指を骨折したりもしたが、まあ、私の人生におけるイベントとしては最悪のレベルではない。住む場所を海外に移したからと言って魔法のように精神が安定したり明るい人間になったりしないことは、以前イギリスに住んだ経験から学んでいる。それなりに楽しく、それなりに悲しくて苦しい、いつも通りの感じで生活している。

 

実は初めて恋人との同棲をしているんだが、感想としては、うーん、総じてプラス。だけどドラマチックプラスではない。毎日愛している人間と同じ時間を過ごせて、ハグできてキスできて、この調子でいけば結婚が待ってたりして、幸せではある。しかし、感じるのは「帯同の大変さ」だ。彼の職業柄多く発生する可能性がある引っ越しについていかなくてはいけないため、定住して職を得てキャリアを積めない。私はリモートワークで稼げるようなスキルもないので、引っ越し先々でジャパレス勤務が限度である。まあ労働はそもそも嫌いだし特にこだわりもないのでまだこの話はよかろう。でも、このまま上手くいって結婚になって、子供を持つことにしたら?私の人生って「なくなる」んだろうか。オンライン大学を出たいという希望は?私は「キャリアも学歴もないパートママ」になるんだろうか。そう思うとどうしても怖い。私は天賦の強い好奇心を持っているので常に新しい知識を求めて走り続ける自信はあるが、一方で母性もかなり強い。「子供がすべて」のママになってしまったらどうしよう。そういう人たちを軽視する意図はない。ただ、私は失いたくないのだ。読書の時間、学習時間、音楽を聴いて、奏でて、作る時間。彼と二人でふざけて青春パンクロックを創作して笑い合う時間。引っ越しと子供に人生が奪われてしまうんじゃないか。彼と暮らす平和で愛のある生活の隙間で少し不安を覚えていたりする。

 

私の恋人は素晴らしい人間である。私はこんなよくできた人間を見たことがない。非常に賢く、純粋に心優しく、はちゃめちゃに可愛く、誰よりも信頼に足り、嘘がつけない性分で、ただ話しているだけで豊かで幸せな気分にしてくれる。友達と話している時に恋人の愚痴を聞かされるとかなり困ってしまう。なぜなら私は愚痴ることがないし、私の口から出てくるのは惚気だけだからである。どうしてあんなに素晴らしい人間が私を愛しているのかよくわからないが、愛しているらしい。普段はそれを口にしないが、大事な時だけ伝えてくれる。だからこそ本物の言葉だと思えて、また信頼が深まるのである。彼には日々驚かされる。迷える私を賢人のように導いてくれたり、全く知らない知の世界に誘ってくれたり、めちゃくちゃ美味しいホットチョコレートを作ってくれたりする。私は稀に見る付き合うのが難しい面倒臭い女だと思うが、寛大な心で受け止め、支え、丸ごと愛してくれている。いつも感謝の気持ちでいっぱいである。一緒にいるために(ビザのために)結婚の話も出ているが、私は何の迷いもない。

 

日本から離れて思うことは、「日本から離れるって最高!」である。私は日本がかなり嫌いだ。特に日本の教育を毛嫌いしているため、小学校以降の子育ては日本国外で、と腹に決めている。別にフランスが日本より優っているとは思わないが、腐り切って未来もない母国に住んでいたいとは思わない。子供を持つなんていう自己中心的な選択をするなら、少しでも子供にとってマシな環境で育てたいと思う。特に子供がハーフなら尚更である。ただ、単純に家族と友人から離れているというのは結構つらい。こっちに来て2ヶ月半、ついに「日本に帰りたい」と本気で思うことがあった。友達と会って話したい... 全ては得られないのだなと痛感する。次の帰国は3,4ヶ月後。正直待ちきれない。

 

フランス生活序盤、まあまあである。長く暮らすつもりではあるので語学を頑張らなくてはなと思っている。早く英語と同じくらい楽に操れるようになりたいものだ。私のことを心配してくれている人に言いたいのは、まあそんなに生活は大変じゃないし大丈夫だよということです。あと、フランスに遊びに来てください。マジで待ってます。

 

また気が向いたら更新します。